驚異の部屋

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ひすとり!×驚異の部屋

ひすとり!とは、主にTwitter上で展開されている、歴史×エンタテイメントを意識したゆるやかなつながりの名称です。
参加者は東西を問わず史学の研究者から歴史を楽しむ一般の方まで様々。主催者がいるわけではなく、固定のメンバーが明確にいるわけでもない自由な空気の元に、突発的に歴史に関するあれこれのつぶやきがTwitterのTL上に発生します。
そんなひすとり!に関わる方々に自分の研究分野や興味対象をモノで表していただきsdtが絵にし、この驚異の部屋に展示しました。
「驚異の部屋」とは、大航海時代以降のヨーロッパにおいて、珍奇なものをジャンルを隔てず集め陳列する部屋のこと。王侯貴族から聖職者・学者などの手によって作られた「驚異の部屋」は、現在の博物館や美術館の原型でもあります。
この部屋に並べられたひとつひとつに、様々な背景があります。
どうぞごゆっくり、まだ見ぬ過去の世界へと、お進み下さい。

キャプション

ガスマスク

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ガスマスク

毒ガス・空襲の歴史、戦間期ドイツの防空体制

ドイツ現代史(空襲、民間防空、戦後の記憶文化、市民社会)を専攻。総力戦時代の新戦争テクノロジーである空襲と、それに対する防空措置や防空組織を「空襲の恐怖イメージ」「社会の軍事化・軍事の社会化」「民間動員における人々の自発性・非自発性」を軸に分析しています。

今回、@sdtさんに描いていただいたガスマスクは、第一次世界大戦という総力戦の象徴であり、来るべき未来戦争が毒ガスによる無差別殺戮戦争になることを暗示する防具でした。毒ガスは人間の生存条件である「空気」を攻撃する空間兵器として登場し、その防具が人間の個別性を奪い匿名化するマスクであったことは、現代戦争を様々な意味で象徴しているのではないでしょうか。これに関しては、ペーター・スローターダイクの『空震』が鋭い指摘をしています。薄くて読みやすいので、ご一読をオススメいたします。シビレます。他にはポール・ヴィリリオの諸著作も、私の研究に影響を与えています。

戦後の記憶文化に関しては、ドレスデン空襲の公的記憶をめぐる議論について調べています。日本でもドレスデン空襲の名はある程度知られています。しかし、その死者数や規模などは、日本でも「神話化」されている面があり、その点を修正するために研究紹介的な論稿を書きました。

ヴァイマル期ドイツの空襲像と民間防空研究は、こちら(pdfファイル)で公開されています。ドレスデン空襲については『季刊 戦争責任研究』(59号、2008年)に掲載されています。ちなみに両者を発展させた研究論文は書籍収集論文として刊行される予定ですので、これからもドイツ史関連の書籍情報をチェックしていただければ幸いです。

他には、歴史ライター(自称ヒストリーコミュニケーター)、伸井太一の名義で活動を始めています。こちらでは、トラバントをはじめとする東ドイツの製品文化に関する書籍を刊行しました。東独の自動車・バイクや建築からエロ本、トイレットペーパーに至るまでを、大量の画像資料とサブカル風の記述を用いて扱っています。宣伝になってしまいましたが、ぜひご一読orご一覧下さい。

この度、@sdtさんに「共産主義車・トラバント」をリクエストしなかったことを激しく後悔していますが、ガスマスクの怪しさが画像全体を十二分に盛り上げて(?)くれているので大満足です。ここでお礼を述べさせていただきます。

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空震―テロの源泉にて
ペーター スローターダイク Peter Sloterdijk
御茶の水書房 2003-07
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戦争と映画―知覚の兵站術 (平凡社ライブラリー)
ポール ヴィリリオ Paul Virilio
平凡社 1999-07
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ニセドイツ〈1〉 ≒東ドイツ製工業品 (共産趣味インターナショナル VOL 2)
伸井 太一
社会評論社 2009-10
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ニセドイツ〈2〉≒東ドイツ製生活用品 (共産趣味インターナショナル VOL 3)
伸井 太一
社会評論社 2009-10