驚異の部屋

画像をクリックすると拡大します。

ひすとり!×驚異の部屋

ひすとり!とは、主にTwitter上で展開されている、歴史×エンタテイメントを意識したゆるやかなつながりの名称です。
参加者は東西を問わず史学の研究者から歴史を楽しむ一般の方まで様々。主催者がいるわけではなく、固定のメンバーが明確にいるわけでもない自由な空気の元に、突発的に歴史に関するあれこれのつぶやきがTwitterのTL上に発生します。
そんなひすとり!に関わる方々に自分の研究分野や興味対象をモノで表していただきsdtが絵にし、この驚異の部屋に展示しました。
「驚異の部屋」とは、大航海時代以降のヨーロッパにおいて、珍奇なものをジャンルを隔てず集め陳列する部屋のこと。王侯貴族から聖職者・学者などの手によって作られた「驚異の部屋」は、現在の博物館や美術館の原型でもあります。
この部屋に並べられたひとつひとつに、様々な背景があります。
どうぞごゆっくり、まだ見ぬ過去の世界へと、お進み下さい。

キャプション

彩色写本『カトリーヌ・ド・クレーヴの時祷書』 纏足靴

 harumaki_rをフォローしましょう @harumaki_r

彩色写本『カトリーヌ・ド・クレーヴの時祷書』

時祷書とは、教会や修道院で使われていた聖務日課書を一般信徒向けに編纂した書物ですが、依頼主の嗜好にあわせて制作されているため、それぞれが実に変化に富んでいます。
1440年代に制作された本書は192ミリ×130ミリと比較的小さなサイズで、全体的に女性らしさを感じさせる装飾が施されていて、特に聖人を扱っているページの囲み飾りが非常に美しいデザインとなっています。
現在はニューヨークのモルガン・ライブラリーが所有しており、以下URLのデジタルアーカイブにて全細密画を見ることができます。
http://www.themorgan.org/collections/works/cleves/

纏足靴

纏足を靴のデザインという新たな側面からとらえ直した本が『纏足の靴』(ドロシー・コウ著、平凡社)。
現代人にしてみれば残酷な風習である纏足ですが、当時の女性にとって重要な儀式であり、身体の延長としての纏足靴には大きな意味が込められていました。
刺繍のモチーフでメッセージを伝えるなど、女性たちのコミュニケーションの手段ともなった靴は、地方ごとに形態や素材、デザインに特色があり、その土地の伝統芸術文化の一端を担っていたのです。

写本絵師には名前の知られている人もいますが、基本的には彩色写本も纏足靴も、芸術家というよりは職人に近い無名の人々の手によるもので、そうした人々の丁寧な手仕事から当時の社会を伺い知ることができるという点に魅力を感じます。
ひとつひとつの物を通じて、顔の見えない作り手についてもあれこれと想像してしまうのです。